ドローンの自動航行により、日本の斜面で栽培する柑橘の農薬通年散布を実現!

【リード】

日本では、柑橘類は急傾斜の斜面で栽培されることが多く、そこでの農薬散布が農業生産者の負担になっています。そんな日本の柑橘生産者が、ドローン自動航行による通年散布を達成しました。ここでは、そこに至る道筋と、達成したことで得られたメリットを紹介しましょう。

 【本文テキスト】

柑橘栽培において、特に重労働なのが農薬散布です。みかん畑の多くは傾斜地だからSS(スピードスプレイヤー)は使えません。複数の農業生産者が共同運営するスプリンクラーは老朽化が進み、維持管理が困難になりつつあります。動噴を背負って人力で散布するのは、もはや限界に近い……。この過酷な柑橘の農薬通年散布をドローン自動航行で実現した生産者が、愛媛県宇和島市の平石吉三郎さん(73歳)です。

 「昔から空を飛ぶものが大好きでね! 好きが高じて続けていたら、いつの間にか通年散布を実現してしまったんです(笑)」と謙遜しますが、その熱意は並大抵ではありません。1970年代にラジコンヘリに自作散布機を搭載して、空からの農薬散布への挑戦を開始。新聞社やテレビ局を呼んでお披露目したものの墜落……。「あれ以来、メディアの方は声を掛けても来てくれなくなりました」と苦笑いします。それでも平石さんは挑戦を止めませんでした。県の獣害対策事業に協力することで、2年間で250万円を貯めました。そうして2016年に念願かなって手に入れたのが『MG-1』。遂にドローン散布が実現したのです。

「夢が叶い、意気揚々と『MG1』でドローン散布を始めたのですが、『MG-1』は自動航行ができないので、ほとんどラクになりませんでしたね(苦笑)。モノレールに沿って歩きながら手動でドローンの操作をしました。小道を整備したり、緊急着陸場を幾つも作ったり……。そもそも手動は墜落の危険と隣り合わせですから精神的な負荷が酷くて、病院に通ったくらいです。黒点病に対してはドローン散布で効果がありそうだ、と手応えは感じていましたが、手動では高精度に飛行させることができないため、散布ムラが生じていました」。

こうした挑戦を経て、遂に平石さんはドローンでの通年散布を実現しました。その相棒が、今年購入したDJI『AGRAS T10』。自動航行が可能な農業ドローンです

「自動航行になったことで、あらゆるストレスから開放されました! 自動航行で、飛行=散布の精度が飛躍的に高まったことにより、遂に、通年散布が実現しました。柑橘農家の方には、圧倒的に効率化できる、というメリットを知って欲しいです。例えば、真夏の暑い時期で連続作業できなくても、2日あれば2haの散布が可能です。気温が低ければ1日で終了します。散布時間は、狭い圃場なら3分、広くても15分程度であれば完了です」。

平石さんに講習を行い、機体を販売したドローンワークス宇和島の代表、本山陽子さんが補足してくれました。

「平石さんが達成した通年散布は、多くの柑橘農家に可能性を示した、と言えますね。例えば、今日散布するのに使った飛行ルートは、平石さんが自分で作ったんですよ。だから病気の出方や天候を見ながら自由に飛行ルートを変更できます。この誰にでも扱うことができる使い勝手の良さもまた、『AGRAS T25』の魅力です」。

本山さんの言う『誰にでも扱うことができる使い勝手の良さ』を証明する方が、平石さんの仲間で、同じく柑橘を生産している土山さんです。

「日本中どこも同じだろうけど、この地域も農業生産者が高齢化しています。私も、もう辞めてしまおうか……と考えていたのですが、平石さんの挑戦を見て、思い直しました。あの苦しい散布をドローンの自動航行で出来るなら、と、一念発起して『T-20』を購入して、生産を続けることにしたんです。ドローンについては本山さんに、散布のノウハウやパソコンやスマホの使い方は平石さんに相談しながら、これからも柑橘生産を続けていきます。作業の負担が減ることで、私は柑橘生産を続ける決断ができました。ありがたいですね」。

最後は平石さんの力強い言葉で、このレポートのまとめとします。

「農業は本来楽しいものです。常に『常識の一歩だけ前』を歩きましょう! それが農業ドローンの活用。もっと言えば、ドローン自動航行による農薬散布です。近未来の柑橘の農薬散布は、スプリンクラーではなく、ドローンになるはずです。皆さんも是非、挑戦してください!」

Rating
( No ratings yet )
Loading...